美歌さん。あなたがいつか、気になってこのページにたどり着くことを想定して書きます。
あなたの執行猶予期間は、2010年3月22日までです。しかし、それであなたの償いが終わるわけではありません。刑事裁判の判決で裁判官が言ったように、「償いは一生」なのです。
あなたのお父さんは、あなたを事件から遠ざけ、忘れさせようとしているようですが、それは大きな間違いです。そのことは、いずれ、あなたが一番理解できるのではないでしょうか。あなたが結婚したとき、夫に話せないことを一生抱えていくのですか? 子どもが産まれても、多くの人間から恨まれて生きている母親だということを隠して育てていくのですか? 子どもが21歳になったときに不安になりませんか? 自分が犯した過ちをまったく謝罪することもなく、人生の次のステップに踏み出せますか? きっと、お金と権力をつぎ込んで娘を犯罪に直面させることなく済ませたお父さんを責めるときが来ますよ。
裁判で認定されたことは最低限のことであり、私たちとしても証拠として提出するだけの裏づけはなくても、裁判外で確認したいことがたくさんあるのですよ。最低限確実な証拠で、最低限裁判所が認めたのが「あなたの過失が100%」という結論だということを理解しておいてくださいね。そして、飲酒運転や信号無視などの大きな道交法違反のない車両同士の事故において、100%の過失が認定されることが稀であることもね。
刑事裁判の認定
刑事裁判の判決は「禁錮2年執行猶予5年」です。
私は、多くの交通事犯の刑事裁判を見てきましたが、飲酒や信号無視などの悪質な道交法違反があるもの、重大事故の前科がある、全面否認している、などを除いては執行猶予が付されるのが通例です。あなたにも執行猶予が付されましたが、「5年」というのは最長です。あまりないのですよ。
裁判官が執行猶予を最長の5年としたのは
「被告人に自己の記憶が客観的事実と齟齬することの認識が必ずしも十分でないことは,当公判廷における供述の端々にあらわれており,極めて遺憾であるといわねばならない。」
この判決文の記述に基づくものでしょう。要するにあなたは客観的事実を「認めていない」ということです。「嘘」をついているということです。
民事裁判の認定
民事裁判では、控訴審でようやく「海外留学」が非常識であると断じられ、直樹が生命を失った原因があなたの「早回り右折」にあったことが認定されました。
「本件事故は、交差点における右折4輪と直進2輪の衝突事故であるところ、Nの認識状況と比較して被控訴人Mには前方への不注意において通常では考えられないような大きな過失があり、また、周囲の状況を正確に認識していないことにおいて甚だしいものがあるだけでなく、道路交通法規に違反する早まわり右折を行ったことが認められる。他方、亡直樹については、制限速度を約10km超える時速約60kmで進行し、Nの認識によれば40m以上離れた位置で被控訴人車を認識していると認められるとはいえ、これは本件交差点における通常の交通の流れに従った走行方法であるといえるし、また、亡直樹としては被控訴人車の動きからして森本車に進路を譲ってくれたものと信頼して進行したものと考えられ、亡直樹に完全に落ち度がなかったとまではいいがたいとはいえ、被控訴人Mの著しい過失に比すると、敢えて取り上げるに足りない程度のものであるということができる。したがって、本件事故においては、損害額を算定するに当たり、亡直樹の過失につき過失相殺すべきではないといわなければならない。」
この判決で、早回り右折が認定されたのは、私たちが提出した鑑定書が認められたからではありません。
「10kmで停止線手前付近から右にハンドルを切り,停止線とセンターラインとの交点(以下「停止線北端」という。)付近を通過してA地点へと同様の速度で右折進行した(原判決別紙2(警察官作成の実況見分調書添付の交通事故現場見取図,甲27)には,被控訴人車が@地点からA地点へ進行した旨の記載がされているが,@地点を記載の角度で通過した自動車が右ハンドルを切っただけでA地点を記載の角度で通過することは物理的に不可能であることは一見して明らかである。後記のとおり,被控訴人車と森本車との衝突の角度が問題となっているが,A地点において両車が衝突している限り,その角度が45度であればもとより,たとえ60度であったとしても,@地点を記載の角度で通過した自動車がA地点に達するためには,急な右ハンドルの後に急な左ハンドルに切り替えなければならず,被控訴人Mがそのような運転をしたことを認めるに足りる証拠のない本件においては,停止線手前付近から右ハンドルを切り停止線北端付近を通過してA地点に達したものと認めるのが相当である。(なお,図面記載の誤りは甲42号証の実況見分調書添付図面においても同様である。)」
以上の判決文は、あなたの実況見分図面が「嘘」であり、衝突地点から一見して明らかに早回り右折であるとしているのです。私たちは、あなたの早回り右折を立証するために、膨大な労力と経費をつぎ込んできましたが、私たちが初めて警察で見せてもらった図面を見て疑問を抱いたのと同様、最終的に裁判官は私たちと同じ判断をしたということになります。事故直後にあなたの供述に基づいて作成された実況見分調書は、走行不可能な軌跡を描いており、意図的に早回り右折を隠蔽しようとしたものだということです。
判決はさらに
「被控訴人Mが死亡事故を起こした刑事被疑者であり,事件が既に検察庁に送致された後であるにもかかわらず,被害者遺族にはもとより検察官にも何らの連絡もなく海外へ留学することは余りにも非常識である上,被害者遺族に対する謝罪等の挨拶にしても,被害者遺族としては,会うことを拒否したとしても,なお謝罪を受け入れてほしい旨の真摯な態度を望んでいるのが普通であるのに,会うことを拒否されたらそのままさっさと帰宅してしまうなど,何ら誠意を示しておらず,被害者遺族の感情を全く理解していないことが認められる」
として、あなたが海外に留学したこと、何らの誠意も示していないことを認定しています。
民事裁判は終了しましたが、「終わって」はいないのですよ。
あなた(のお父さん)は、大阪高裁が出した和解案を断りました。それも、「裁判所に行きたくない」という理由で。その結果の判決が上記の通りです。
和解に応じなかったということは、裁判は終わりましたが、あなたと私たちとの問題は何一つ解消していないということです。私たちは、あなたにお会いして確認したいことがたくさんあります。あなたが謝罪に訪れないのであれば、このページ上で質問を列挙しておきます。答える気におなりになったらご連絡ください。
私たちは、あなたが謝罪することもなく、何があったかを説明することもしないので、毎日、事故のことについて考える日々が続いています。そして、今の結論は、あなたが「直樹のクラクションに腹を立ててアクセルを踏み込んだ」ということです。もちろん「脅かすつもり」だったのかもしれませんが、結果が最悪となったために真実を話すことができなくなった。そう考えています。そうすれば、あなたの奇妙な行動が見事に説明できるからです。
しかし、もしこの考えが正しければ「未必の故意」による殺人事件になります。
事実はそうではないと、あなたが明確に否定してくれることを望んでいます。事故の原因が「過失」であるならば、それが何であっても赦す用意はあります。お互いが穏やかに暮らせるように、あなたが謝罪に訪れることを願って、いつまでもお待ちしています。